すぐ泣く人(アマデウスを観に行ったときの話)

久留米まで舞台を観に行った。平日ど真ん中の有給休暇を取得して、4時に起きてバスに飛び乗った。

千秋楽、スタンディングオベーション、高揚感、全部揃っていて、ああ泣いちゃうんじゃない?と思ったら、やっぱり泣いていた。舞台の上の人も私も。隣のお姉さんが嗚咽していたので、少し冷静になったけれども。

チャンスは何度もなくて、「はいどうぞ」と前触れなく与えられたたった1度のチャンスに、僕の答えはこうです、と、自分の答えを返さなければならない。多分それは、誰しもが同じなんじゃないかと思う。「やりますか?」と言われて「やります」もしくは「やりません」と返す、そのイエスかノーかの選択を、何度も繰り返して人は歳をとっていく。

自分がイエスともノーとも言えなくて、時間切れでどちらも選べなくなってしまった過去を思い出していた。ふがいない自分が客席に置き去りにされて、思考だけが劇場の天井にある、異国風の照明に絡みついているような気がした。

私の好きな芸能人が、この舞台に、出ます、と、イエスの選択肢を時間内に選んでくれてよかったなと思った。今まで積み重ねて来た選択を、ひとつずつ正解にする過程を、まだ見ていたいなと思った。これがファンになるということかと、今更ながら思った。

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